日本のイルカ猟廃止への鍵を握るのは中国かもしれない

Ric O'Barry and Hans Peter Roth atop the Great Wall of China. Photo: Sasha Abdolmajid

これは、中国で先月出版されたリック・オバリーとハンス・ピーター・ロスの共著による新書『ザ・コーヴ』について、北京青年日報に掲載されたレヴューの翻訳です。

Ric O'Barry and Hans Peter Roth atop the Great Wall of China. Photo: Sasha Abdolmajid

“ドルフィン・プロジェクト” 万里の長城にて。写真:Sasha Abdolmajid

日本のイルカ猟廃止への鍵を握るのは中国かもしれない。 — Richard O’Barry

2015年4月22日、今年46回目を迎えるワールド・アースデーに、北京書籍多目的ホールではショッキングな映像が映し出されました。数人の漁師が数匹のイルカ達をボートに引きづり込み、その横では一頭のイルカが血の海にそまったコーヴで最後のジャンプをしているという映像の上映に続き、中華書局から出版された『ザ・コーヴ』のお披露目がなされました。

The newly published book 'The Cove' (Dolphin Bay) in simplified Chinese

中国で先月出版されたリック・オバリーとハンス・ピーター・ロスの共著による新書『ザ・コーヴ』。

この映画の上映には、この本の著者リック・オバリーとハンス・ピーター・ロスが出席していました。この北京書籍多目的ホールで紹介された映像の場面は、ドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』からのシーンで、映画にも出演しているリック・オバリーの意向によるものでした。

2010年、映画『ザ・コーヴ』は82回目のアカデミー賞ベスト・ドキュメンタリー賞を受賞しています。映画には日本の小さな太地町という名の村で、漁師たちがイルカを血まみれにして殺しているシーンがいくつか記録されています。捕まえられたイルカ達の中から数頭の美しいイルカは、水族館で芸をするために利用され、残りは食肉消費のために、と殺されます。しかし、水銀濃度の高いイルカ肉は人間が食べるのには適さないのです。

撮影許可を取る事は不可能なため、いくつかの重要なシーンは、人口石に隠しカメラを設置しての撮影となりました。 本『ザ・コーヴ』は、この撮影の為の試みがどの様にして行われたのか描写しており、そしてどの様にこの残酷な捕獲、生体販売産業が成り立っているのか、さ らにリック・オバリーという人物の、イルカを守る為に選ばざるを得なかった難しい経歴も説明されています。

シンプルに訳された中国語版の『ザ・コーヴ』はとても意味のあるものに仕上がっています。それは、中国が日本のイルカ猟廃止の金の鍵を握っているかもしれないからです。

75歳になるリック・オバリーは、公然と意見を述べる事で強い存在感を作りました。今回も彼は席を離れリーダー達が座っている席へと出向きました。そして観客に向かって「死んだイルカは1頭500ドルで売られるが、太地から中国への生体販売では1頭150.000ドルで取り引きされている。主に太地からイルカを購入している国は中国です。北京動物水族館(Beijing Zoo Aquarium )をはじめ、イルカショーを行う数多くの水族館が中国にある。そして、その全てのイルカは太地町の血に染まったコーヴから連れて来られたのです。」

「この本が出版される事で、たくさんの人々にこのイルカ輸入に対しての平和的な解決に向けて貢献してもらえる事を願っている。その手始めとして私達の活動にここ(中国)で、イニシアチブを取って参加して頂ける方はいますか?」

すると殆ど全ての観客が手を挙げ、リックは大喜びで微笑みました。

太地では、毎年9月1日から3月31日まで、イルカ追い込み猟が行われています。毎年9月1日に、リックは、彼のチームと共に太地町で抗議活動を行っています。ドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』は、太地の漁師が世界中の多くの人々から非難されていることを伝えています。しかし、日本の漁師からの反応は、西洋人が、彼ら(太地)の伝統的な漁業や食文化を誤解していると言うものです。

この点について、リック・オバリーは、対立よりもむしろ協力して解決したいと強調しました。「イルカを殺しているのは、たった50人の太地の漁師であり、すべての日本人では無い。私たちは、鯨・イルカウォッチングの様な観光業を紹介して、彼らがイルカを殺さなくても良い生活方法を見つけられるように協力したい。」

Ric O’Barry explains scenes described in the book. Photo: Sasha Abdolmajid

リック・オバリーが本に記載されているシーンを説明している。 写真:Sasha Abdolmajid

『ザ・コーヴ』がオスカー賞を受賞して以来、イルカの屠殺数は減少しており、2000年に殺されたイルカは、約2000頭あまりでしたが、ここ数年では、1シーズンで900頭以下に減少したと報告されています。イルカ肉の需要もまた減少してます。この本『ザ・コーヴ』では、『この問題を解決する力は日本国内に有る』と言う事実を強調しています。

中国市民は、通常はイルカ肉は食しませんが、しかしこの本『ザ・コーヴ』は私達の前に質問を投げかけています。: あなたは、それでも水族館に行くためにチケットを購入しますか?と。

翻訳 Maho Cwejman / 岡田真吾

オリジナル中国語記事 : 北京青年日報

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